93歳の教育研究者、大田堯の挑戦。それは、一兵卒として経験した戦争から始まった。そこで彼を待ち受けていたのは、36時間の生と死が交錯する漂流だった。生きる力を試されたジャングル生活。生活に根ざす知恵と力を身につけた農民兵や漁民兵など労働者たちとの出会い。自分は一体何のために生きているのかと、プライドはズタズタにされた。敗戦直後。さまざまな職業の住民が参加した“民衆の学校”作りに取り組むが、挫折。そして、自ら働く人たちの中に飛び込んでいった共同学習。それは村の不良青年と生活を共にし、学ぶことを通して、初めて心と心を通わせることのできた学習体験だった。やがて訪れた高度経済成長時代は社会も教育の姿もガラリと変える。国を被告とする家永教科書裁判、人間の絆が断ち切られる孤独化現象。大田堯の人生は戦後と真正面から向き合っていく。そのなかで掴んだ教育とは、“教え育てる”という従来の教育観を根底から覆すものだった。そして大田は今、自然の摂理に沿った、生命あるものの絆の再生を目指す。
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