AV監督の加山は、妻の千恵や数人の仲間たちと新宿の片隅で小さなAV製作会社を営んでいた。もともとピンク映画界で育ち、数本の映画を撮ったもののピンク映画衰退という時代の流れや、家族を養っていくためにAVに転向した加山は、そんなAV界に多少の疑問を感じつつも、その楽しさに熱中しながら生活を支えていた。そんなとき、偶然学生時代の未完成8ミリフィルムを見つけた加山は、自主映画を撮ってみようかなという思いが沸いてくる。だが、現実的にAV監督の日常が待っている加山はなかなか割り切れない。「あのころの自分に戻ってみたい」と思うようになってきた加山は、ふと学生時代に憧れた女・依子のことを思い出し、彼女の家の裏のアパートを借りて既に主婦となっている依子のライフスタイルを陰で見つめる。そんな時、加山の周りでは親会社とのあれつきや、仲間たちとの衝突、学生時代の友人がガンになったことなど、家庭も仕事も日常も微妙にずれ始めていた。さらに加山は十日以上も会社を空けて行方不明。そんな加山を何とか救おうとする千恵と娘・亜希の存在。加山は映画のシナリオ執筆のため、千恵と結ばれた場所でもある『伊豆の踊り子』の舞台の旅館にいた。過去の自分たちを取り戻そうと千恵と亜希を呼んで忘れかけていた楽しい一時を送った加山は自らを見つめ直し、また日常へと戻っていくのだった。...
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