検事総長亘理信直の息子である青年作曲家の亘理直彦は、交響楽「聖女」で世間に脚光を浴びた。しかし、彼の弟子内山と親友の土岐大輔検事が、「彼の音楽は技巧だけのポーズで、心を打つ芸術ではない」と激しく非難した。この批判を受け、直彦は自信を失い自暴自棄になり、泥酔しているところをキャバレーのマダム美代に助けられ、彼女の家に転がり込んだ。 美代は、かつて東北の故郷で雇い主に犯され、底辺に転落し、今では銀座のキャバレー王坂田の妾となっている。直彦には初恋の男性の面影があったため、美代は彼に惹かれ始め、直彦も娼婦の美代の中に聖女のような心を見出した。二人は坂田の目を盗んで同棲を始めるが……