「山水園」は北国特有の情緒ある横手市で、長年続いてきた格式ある料亭である。女王人の高澄江は夫に死別した後、女手一つでこの料亭を切りまわしてきたが、今は破産寸前であった。だが、一人娘の朝美に縁談がおきた。土地の造り酒屋の次男坊英彦で、「山水園」の立て直しの援助もするという条件であった。大伯父をはじめ親戚も大賛成、澄江は急拠東京にいる朝美を呼び戻した。朝美は音楽学校に在学していて、恋人の学生、聴涛和也と一緒に帰って来た。澄江にとって和也の出現はショックだった。澄江は和也を諦めさせようとするが、二人はかえって愛を強く誓いあった。ある日、大伯父は朝美を山奥の温泉宿へ連れ去った。朝美を和也から引き離し、気の静まるのを待って見合させる気だった。この朝美と和也の悲痛な姿に同情したのは「山水園」の板前の健造だった。健造は女主人澄江に対する叶わぬ恋を胸に秘め、四十五歳の今日まで独身を通していた。親族会議の結果、見合の日が決った。健造は自分の若い日を思い、英彦に和也との事情を話して頼みこんだ。男気のある英彦はきれいに身を引いてくれた。見合の不成立を知った澄江は健造をせめた。健造は初めて自分の切切たる気持を訴え、若い二人を倖せにしてやって下さいと頼むのだった。二度目の親族会議が開かれた日、澄江は一同の非難を浴び、「山水園」を追い出されることになった。しかし、澄江は、この時になって母として女として今迄味わうことの出来なかった倖せが心の底からこみあげてきた。朝美と和也が手をとり合い、再び上京して行った日、若い二人を見送った澄江、健造の瞳には満足そうな和らぎがただよっていた。
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