わたしの勤める新聞社が企画した展覧会への出品資料として、宮崎支局から西郷札とその「覚書」が送られてきた。興味を抱いたわたしは覚書を筆写した。内容は以下のように始まる。 日向国佐土原生まれの士族・樋村雄吾の家は、明治の廃藩置県を受けて世禄を失った。父は後妻とその連れ子・季乃を迎える。季乃は雄吾を兄さまと言って慕ったが、雄吾は素直に感情を出せず、何となく拗ねた態度に出ていた。雄吾は西南戦争に参加したが、その間に父は死去、家は戦火で焼かれ、継母と季乃は行方知れずとなっていた。雄吾は悄然と故郷を去り、東京へ向かう。無為のうちに過ごす雄吾だったが、やがて俥(くるま)を曳く車夫として収入を得るようになる。ある夜、エリート官吏・塚村圭太郎を深川清住まで送った雄吾は、屋敷の近くで季乃の顔を発見し、動揺する…。
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